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Gallery - 作品展示

彼方の誕生日

男賢者→ジェイド 女武道家→タニア 男勇者→ゲイト 女賢者→レイラ

 


 アリアハンの宿屋
ジェイドとレイラは部屋を二つ取り、そこに泊まっていた
ゲイトとタニアは自分の家に戻っている
ジェイドは自分の部屋で、ベッドに仰向けに寝転がって本を読んでいた
何度も読んだ本だが、暇つぶしにまた読んでいる
・・・何度読んだのかは覚えていない
欲しい本がないわけではないが、少し値段が高いのだ
安い本は、すでに読み尽くしている
「・・・旅の資金を使うわけにもいかないしな・・・」
ジェイドは今読んでいる本を閉じ、別の本を開いた
少し読むと、全ての内容を思い出してしまう
「・・・バイト・・・は、めんどうだな・・・」
ジェイドはため息を一つして、ぐっと伸びをした
同時に、
「ジェイド!」
部屋の扉が勢いよく開いた
この声は・・・
「タニアか・・・」
起き上がって扉の方を見ると、タニアが息を切らして立っていた
何か紙袋を抱えている
「ノックぐらいしたらどうだ?」
「したよ? ・・・多分」
「多分?」
「もしかしたら・・・」
「もしかしたら?」
「・・・ごめん」
「・・・ふぅ」
呆れたようにまたため息をついて、だが薄く微笑む
「で? 何の用だ?」
「あ、うん 誕生日おめでとう!」
「・・・誕生日?」
思わず聞き返してしまった
少し考え、さらに考え・・・
「・・・俺のか?」
「そうだよ ・・・あれ? 違ったっけ?
 レイラにそう聞いたんだけど・・・」
ああ、思い出した
弟子のレイラには教えていたことを思い出し、苦笑する
誕生日なんて、あって無いようなものだった
ふとタニアの顔を見ると、不思議そうにこちらを見ていた
「・・・間違い、だった?」
「いや、確かに誕生日だよ ・・・一応な」
それを聞いたタニアは笑顔になった
持っていた紙袋から本を3冊取り出し、ジェイドに渡す
「・・・何だ?」
「誕生日プレゼント! 本だよ
 この前、本屋さんに行ったら、その3冊を眺めてたでしょ?」
・・・驚いた
確かにタニアと一緒に本屋に行ったことがある
だが、もう2ヶ月近く前の話だ
・・・そんな前のことを、覚えていたのか
ジェイドは本を開き、ぱらぱらとめくっていく
タニアの方を向いて、
「・・・なに? ジェイド」
「いや ・・・ありがとう」
少し躊躇して、言った
タニアはかなり驚き、しばらく固まる
ジェイドは頬を少しかくと、本に目を落とした
開いて読み始める
タニアははっとしたように我に返ると、
ベッドの近くにあるいすに座った
紙袋から本を1冊取り出し、読み始める
見ると、ジェイドが数ヶ月前に譲った本だった
「・・・まだ読んでたのか?」
「え? あ、うん この本、おもしろいから」
タニアが笑顔で答え、ジェイドは、そうかと短く答えて再び本に目を落とす
何かおもしろい本はないかと聞かれて、譲ったっけかな
ジェイドは本を閉じ、自分の本を1冊取り出した
冒険物の小説だ
「今度はこれを読んでみるか?」
「・・・いいの?」
「ああ 本の礼だ」
タニアは受け取り、本を開く
少し読んでから顔を上げて、
「ありがとう、ジェイド」
「・・・ああ」
ジェイドは再び本に目を落とした
正直、人付き合いはさけたい
だが、こういうのも悪くはないな
そんなことを考えている自分に驚いて、
ジェイドは苦笑混じりに微笑んだ
・・・今度は、どの本を薦めようか・・・
                 (終わり)

 


Written BY NO.27 龍神ウィケッドさん

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